電子黒板の黎明期から市場を支えてきたロングセラーブランド「BIG PAD」。
教育現場だけでなく、企業・行政・医療など、幅広い分野で長年愛されてきた。
その背景には、「誰でも翌日から使える」という徹底したシンプル設計の哲学がある。
日本を代表するブランドSHARPがなぜ“盛らない設計”に辿り着いたのか、
そして導入現場でどんな価値が生まれているのか、
Koku ban BASEの遠藤が萩原氏に迫る。


■ BIG PADの原点「誰もが直感的に使える電子黒板を」


遠藤:
SHARPさんは電子黒板の黎明期からBIG PADを展開されていますよね。
そのスタート地点にはどんな思想があったのでしょうか?

株式会社 idea spot 遠藤 幸治(Koji Endo)


萩原様(以下、敬称略):
BIG PADは、当初から特定の業種に絞らない製品として開発してきました。
学校、塾、企業、行政、医療施設……幅広い方に使っていただきたいと考えていました。
これは、あらゆるお客様のニーズに応えるという文化がSHARPに根付いているからです。

シャープマーケティングジャパン株式会社 萩原 淳司(Atsushi Hagiwara)

遠藤:
確かに、学校だけでなく企業の会議室での使用事例も耳にします。
実は私も前職でBIG PADを使ったことがありますが、操作が非常に分かりやすく、
「操作を覚える」時間が全く必要ありませんでした。

萩原:
ありがとうございます。
BIG PADが長く選ばれてきた理由のひとつは、まさにその「分かりやすさ」だと思います。

遠藤:
ただ、なぜBIG PADはここまでシンプルで、わかりやすいのでしょうか?

萩原:
実は立ち上げ当初、私たちは「先生のために、できるだけ多くの機能を載せるべきだ」と考えていました。
授業スタイルに合わせて柔軟に使っていただけるように、とにかく機能を増やしていたのです。

ところが、正直なところ、導入は思うように進みませんでした。

遠藤:
なぜそうなってしまったのでしょう?

萩原:
理由はシンプルで、「ICTの苦手な先生に寄り添えていなかった」からです。

約17年前の立ち上げ時は、今と比べてデジタルに慣れている方も非常に少ない時代でした。
当時はまだスマートフォンも一般的ではなく、ちょうど初代iPhoneが出た頃ですよね。

遠藤:
そう考えると、かなり前の話ですね。多くの方がまだガラケーを使っていた時代ですね。

萩原:
そのような時代でも、デモンストレーションを行うと、一部のデジタルに強い先生は
「こう使おう」「こんな授業ができる」と、どんどん活用してくれました。
しかし、その一方で、多くの先生は置いてけぼりになってしまったのです。

使いこなせている先生が、苦戦している先生にじっくり教える時間もなく、横展開するためのノウハウもない。
結果として、「一部の先生だけが使い続けている状態」が常態化してしまいました。

遠藤:
先生のためを思って機能を増やしたのに、現場ではかえって浸透しにくくなってしまったわけですね。

萩原:
はい。そこで私たちは、発想を大きく切り替えました。
難しい製品に先生を合わせてもらうのではなく、製品のほうを先生に寄せようと。

その結果、SHARPがたどり着いた答えが、
必要な機能だけを残し、限りなくシンプルにする」という方向性でした。

遠藤:
今のBIG PADの設計思想につながっていくわけですね。

萩原:
そうです。BIG PADは「全部入りのデバイス」ではなく、外部デバイスと自由につながる余白を残しています。
一方で、「書く」「消す」「映す」「繋げる」といった基本操作は、誰でも直感的に迷いなく行えるようにしました。

この“引き算の設計”にしたことで、現場の先生方からは
「これならすぐ使える」「明日からでも授業に取り入れられる」という声を多くいただきました。

遠藤:
だから、これほどまでにシンプルなのですね。

萩原:
はい。翌日から誰でも使えることこそ、日本を代表するメーカーの責任だと考えています。
そして、そのうえで――

Kokuban BASEには、そうした製品と現場をつなぎ合わせる“ハブ”になってほしいとも思っています。
決して宣伝という意味ではなく、先生方と電子黒板の間に立って、
「どう使うと授業が良くなるのか」を一緒に考えていただける存在だと感じています。

遠藤:
そう言っていただけて光栄です。
私たちも、電子黒板の導入が結果的に「ICT格差」を助長してしまうことはあってはならないと考えています。
だからこそ、さまざまな使い方を今でも研究し続けています。


■導入ケース スモールスタートから大規模導入まで、現場に合った広がり方

遠藤:
導入規模にはどんな傾向がありますか?

萩原:

学習塾においては、まず1台入れて試してみる“スモールスタート”が多いです。
一方、学校では複数台の一斉導入も珍しくありません。

遠藤:
学校現場だと、すべての教室で同じ電子黒板があったほうが使いやすいですよね。

萩原:
実際、BIG PAD 70型を40台導入したA小学校があります。

遠藤:
40台!? すごい規模ですね。どんな背景があったのでしょう?

萩原:
A小学校では以前、テレビ型のモニターやプロジェクターを使って授業をしていましたが、
席によって見づらい・明るい教室では映像が見えにくいといった課題がありました。

遠藤:
座席によって見えづらくなる、あの問題ですね。
季節や気候によって見え方も異なりますし、明るさ調整も大変です。

萩原:
そうした現場での調整が先生方の負担になっていました。
BIG PAD導入後は、離れた席からでもはっきり見えるようになり、児童の集中力も向上したそうです。

さらに、ディスプレイが簡単に移動できるため、レイアウト変更や特別教室への展開もスムーズになり、
先生方から非常に高い評価をいただきました。

遠藤:
「見やすい・使いやすい・動かしやすい」。
その3つが大型導入の理由だったわけですね。

萩原:
まさにその通りです。運用のしやすさも評価され、40台導入という結果につながりました。


■ SHARPのアフターサポート 「1週間使えない」を作らないために

遠藤:
SHARPさんはサポート体制にも定評がありますよね。

萩原:
はい。全国に拠点があり、故障時の対応スピードには特にこだわっています。
購入後、使い始めてからがスタートですから、導入して終わりではありません。

遠藤:
学校や塾では、1週間使えないだけでも大問題になります。

萩原:
「故障しました。1週間使えません」では、運営に大きな支障をきたします。
だからこそ、全国各地にある拠点を通じて、なるべく早くご対応できる体制を整えています。

遠藤:
非常に心強いですね。

萩原:
安心して使い続けてもらうことは、メーカーの果たすべき責任だと考えています。
そういったサポート体制は、日本国内でもトップレベルだと自負しております。


■ 対談を終えて 現場に寄り添う“ちょうどいいICT”を、これからも

左から株式会社 idea spot遠藤、シャープマーケティングジャパン株式会社萩原様、大西様、八幡様

遠藤:
まず、日本を代表するメーカーの方とお話しできて光栄です。記事に載せきれないお話も多いので、
ご来場いただいた方には、そういった部分も直接お伝えしていきたいと思います。

すべての先生が明日から使えるBIG PAD。ベテランの先生が多い現場では、大活躍間違いなしです。

萩原:
ありがとうございました。SHARPとしても、技術だけに頼らず、人に寄り添う設計と、安心できるサポートで
教育現場を支えていきたいと考えています。

Kokuban BASEのように「触って比べて選べる場」は本当に価値があります。
これからも、ぜひ一緒に現場を支えていけたら嬉しいです。