第1章 教育現場が困らないようにする、設計思想

株式会社idea spot 遠藤 幸治

遠藤:
長年プロダクト開発に携わり、国内外の動向も把握されている鳥井様ですが、改めて MIRAI TOUCH の最大の強みはどこにあるとお考えでしょうか。

さつき株式会社 常務取締役 鳥井 亮伸様

鳥井様(以下、敬称略):
率直に言えば、教育環境への配慮です。より具体的に言うと、教育現場の未来に起こりうる負、不満やリスクを先回りして解消している点にあります。教育現場では、今は表面化していなくても、数年後に必ず問題になることが少なくありません。
だからこそ、先回りして手を打つことを意識しています。

遠藤:
具体的にはどのような点でしょうか。

鳥井:
広島市内の学校での導入事例をお話しします。広島市では、毎年8月6日に平和祈念式典の映像を学校で見る文化があります。年に1回のために外付けチューナーを接続すると、配線が増え、操作も複雑になり、落下や故障といったリスクも生じます。

遠藤:
現場の負担も増えてしまいますね。

鳥井:
そこで、MIRAI TOUCH は HDMI を占有しないテレビチューナー内蔵モデルを開発しました。リモコン一つで操作でき、現場に新しいストレスを生まないことを最優先しました。その結果、広島市内で約4,000台導入いただいています。

遠藤:
導入だけの観点で考えると、外付けチューナーの選択が容易に感じます。

鳥井:
おっしゃる通りです。ただ、電子黒板は導入して終わりではなく、長く教育インフラとなる製品です。教育現場の視点から見て、解消できる不満は解消すべきと考えています。

遠藤:
最新モデルでは、どのような工夫が施されていますか。

MIRAI TOUCH公式HP参照

鳥井:
数多くありますが、分かりやすい一例が天面スピーカーです。MIRAI TOUCH はスピーカーを電子黒板の上部に配置しています。音が天井に反射して広がるため、教室の後ろの席の子どもたちまで、音が均一に届きやすい構造になっています。

遠藤:
非常に合理的ですね。

鳥井:
ええ。ただ、これは現場から強く要望された機能ではありません。数年前から、動画や AI を使った授業が増えることは明らかでした。そうなると、音の聞こえ方の差が、そのまま学びの差になる。だからこそ、課題として表面化する前に仕様を変更しました。

遠藤:
起きてから直すのではなく、起きる前に未然に防ぐという考え方ですね。その文脈で言うと、MIRAI TOUCH の翻訳アプリには正直驚きました。公立学校では、日本語指導が必要な児童生徒がこの約10年で1.9倍に増えています。こうした状況を見ると、多言語対応は、もはや特別な配慮ではなく、教室の前提条件になりつつあります。


鳥井:
今の教室には、第一言語が日本語ではない子がいることも珍しくありません。教師が悪いわけでも、子どもが悪いわけでもない。ただ、教室を取り巻く環境が変わってきています。

遠藤:
MIRAI TOUCH 独自の同時翻訳アプリケーションはより活きますね。

鳥井:
はい。MIRAI TOUCH には、教師が話した言葉をその場で多言語に翻訳し、画面に表示できる独自のアプリケーションがあります。教師は普段どおり授業を進めるだけで、日本語に不安のある子どもにも内容が自然に届きます。特別な操作や事前準備は必要ありません。

遠藤:
教師側の負担が増えない、という点が大きいですね。

鳥井:
そこが一番大事だと考えています。多言語対応というと、準備が大変で、特別な授業になるイメージを持たれがちですが、それでは現場に定着しません。MIRAI TOUCH は、普段の授業の延長線上で、自然に使えることを重視しています。

遠藤:
支援している、という意識すら持たせない設計ですね。

鳥井:
そうです。日本語が分からない子どもだけを特別扱いするのではなく、全員が同じ画面を見て、同じ情報にアクセスできる。それが、私たちが考えるインクルーシブな教室の姿です。

鳥井:
MIRAI TOUCH は、今ある不満だけではなく、次に生まれる不満も視野に入れ、設計しています。

徹底した現場目線が叶えた安心と使いやすさの機能一例

  • 天面スピーカー
    音が天井に反射して広がる構造で、教室の後ろの席の子どもたちまで音が届きやすく、音質の公平性を確保。
  • 操作部の前面搭載
    電源、入力切替、外部入力端子を本体前面に搭載し、教員が授業中に簡単に操作できる利便性を確保。
  • 管理者権限ロック
    ネットワーク設定や初期化などの重要操作を管理者のみに制限し、授業中の誤操作や生徒のいたずらを未然に防止。
  • 特殊なスタンドの足
    お子さんがキャスターの足に引っかかるリスクを軽減するよう設計。
  • ケーブルの統合
    拡張性を内蔵機能でカバーし、電源ケーブル1本で利用できるシンプルな配線を実現。
  • 2ピン電源の採用
    既存の古いコンセント(アースなし)でも、変換プラグなしで安全に使用可能。

第2章 誰一人取り残さない インクルーシブ電子黒板

遠藤:
MIRAI TOUCH は、誰にとっても使いやすいインクルーシブ電子黒板を掲げています。この思想に至った背景を教えてください。

鳥井:
原点はとてもシンプルです。誰にでも、同じ情報が、同じ品質で届くこと。
以前、導入校の公開授業を廊下から見たことがあります。そのとき、廊下から電子黒板が見えにくいことに気づきました。使っている先生も、前列の生徒も、誰も困っていませんでしたが、廊下から見ると違った。

遠藤:
使っている側では気づきにくい問題ですね。

鳥井:
その瞬間に強いショックを受けました。後方の子どもは、本当に見えているのか。そこから、誰でも同じ教育体験ができる設計を目指すようになりました。

遠藤:
ダイレクトボンディング技術も、その思想の延長線上にあるわけですね。

鳥井:
その通りです。我々は「見え方」には強い拘りを持っています。ダイレクトボンディングは液晶とガラスを特殊な糊で貼付させることで、内部反射を抑え、斜めから見ても鮮明に表示される。見えにくさという、授業中には言語化されにくいストレスを、技術で減らしています。

(※ダイレクトボンディングの技術詳細については、中学受験理科担当の吉本がこちらの記事で解説しています)。

https://kokuban-base.com/columns/miraitouch-direct/

第3章 製造のブラックボックスを解体した開発思想

遠藤:
高性能でありながら、価格帯を抑えられている点も評価されています。その理由はどこにあるのでしょうか。

鳥井:
設計という「最上流」から、開発・製造、そして販売に至るまで、すべての工程を自社で一気通貫して管理している点が最大の理由です。一般的にはブラックボックスになりがちな「部品の選定」から「組み立て」「検査」まで、あらゆるプロセスを完全に把握しています。私自身、今でも現地の製造拠点へ定期的に足を運び、部品メーカーと直接対話を重ねることで、品質の細部まで目を光らせています。

遠藤:
開発と製造の距離が近いのですね。

鳥井:
はい。「どの部品を変更すれば、製品の品質にどう影響するか」を完全に理解していますから。安い部品には必ず安いなりの理由がありますが、私たちは中身を知らずにコストだけを下げるようなことはしません。品質を担保できるラインを見極めた上で、最適な部材を選定しています。

遠藤:
現場と製造、両方を知っているからこそできる判断ですね。

鳥井:
ええ。その「現場視点と製造ノウハウ」の融合から生まれたのが、特にご好評いただいている「下向きカメラの内蔵」です。外付けの手間をなくし、ボタン一つで起動する直感的な操作性を実現しました。現在は光学3倍ズームにまで進化していますが、これは独自の構造特許を取得しているため、他社には真似できない我々だけの強みです。

第4章 70,000台の先へ 支え続けるという責任

遠藤:
今後の課題はどこにあるとお考えですか。

鳥井:
累計70,000台以上を導入いただき、初代モデルを使い続けてくださる学校もあります。新製品を出し続ける一方で、既存のお客様の満足度をどう維持するか。それが最大の課題です。

遠藤:
具体的にはどのような取り組みをお考えですか。

鳥井:
サポート体制の強化です。AI を活用した対応の高速化や、営業全員を製造工場に連れて行き、製品への理解と自信を持たせています。

対談を終えて

左からさつき株式会社 岩上 竜昇様、鳥井 亮伸様、株式会社 idea spot遠藤 幸治、さつき株式会社 関谷 大輝様

遠藤:
今回の対談を通して強く感じたのは、MIRAI TOUCH が「便利な電子黒板」を目指しているのではなく、「不満が生まれにくい教室環境」を本気で設計しているという点でした。天面スピーカーや同時翻訳アプリといった機能は、いずれも派手さはありませんが、授業の質を静かに底上げするものばかりです。教育現場が多様化していくこれからの時代において、こうした先回りの思想こそが、学校に長く使われ続ける理由になるのだと感じました。

鳥井:
私たちが一貫して大切にしているのは、「困ってから直す」のではなく、「困らないようにする」ことです。教室の中で起こる小さな違和感や不便さは、声に出されないまま積み重なっていきます。だからこそ、現場を想像し、未来を想像しながら設計することを続けてきました。この対談を通して、その考え方が少しでも伝わり、教室づくりを考えるきっかけになれば嬉しく思います。